ガーデンテラス703号



「さっきお前とタクシーから出てきた男だよ」

「あ、あぁ。戸田くん。会社の後輩だよ。今日、契約社員の人の送別会があって、同じ方向だからって一緒にタクシーに乗って帰ってきたの」

早口で説明したら、ホタルが私の顔を窺うようにじっと見つめて、それから小さく鼻で笑った。


「へぇ。次の男はあいつにすんの?」

嘲るようなホタルの声が、私を悲しくさせる。


「そんな言い方やめてよ。戸田くんはただの後輩で……」
「でも、あいつはそう思ってないかもよ?」

反論しようとしたら、すぐにホタルに言葉を遮られる。


「何言ってるのよ。そんなわけ……」

「ないって確実に言い切れんの?」

その言葉に、タクシー代を渡すときの戸田くんの俯いた顔を思い出してなぜかドキリとした。

黙り込んだ私を見下ろして、ホタルがふっと皮肉っぽい笑みをこぼす。


「ほら、言い切れねーじゃん」

「そんなこと……」


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