ガーデンテラス703号



私より先にエレベーターを降りたホタルは、早足で通路を歩いてどんどん先に行ってしまう。

先に703号室の前にたどり着いたホタルが、私を待たずに部屋の中に入って玄関のドアを閉めてしまおうとするから、私は慌てて駆けて、閉じかけのドアの隙間に身体を滑り込ませた。


「ちょっと待って」

もう玄関に上がって、すぐそばの自分の部屋に消えようとしているホタルを捕まえようと手を伸ばす。

焦ってパンプスを脱いで玄関に上がろうとしたら、片方がうまく脱ぎきれずに玄関の段差に引っかかってバランスが崩れた。

前のめりに転びかけた私に気がついたホタルが、振り返って咄嗟にこっちに腕を出す。

だけど、私があまりに勢いよく前に飛び込んだものだから、ホタルは私を抱きかかえるようにして後ろに尻餅をつくハメになってしまった。


「あぶねぇな」

右手で私を支えて、左手を後ろについたホタルが、呆れ顔でため息をつく。


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