ガーデンテラス703号
「そういうことって……別にホタルとは何も起こり得ないし。それに私、そもそもそういう飲み会には興味ないって前から――……」
「一緒に住む彼の名前、ホタルっていうんだ?綺麗な名前だね」
勝手に盛り上がっている香織があたしの言葉を遮って肩を叩く。
同期の香織とは、入社したときから仲がいい。
入社した直後に学生時代からの彼氏の遥斗と別れて落ち込んでいた私を励ましてくれたのは香織だった。
遥斗と別れてからは誰かと付き合うことはおろか、出会いのある場へ自ら足を運ぼうともしない私を心配した香織は、ことあるごとに、男の人との飲み会に私を誘ってくれる。
だけど私は初対面の人と一緒にお酒を飲むのも話をするのも苦手で、人数が足りないとかで香織に頼み込まれたとき以外はその手の飲み会は断っている。
そんな私がルームシェアで男の人と住むなんて言ったものだから、香織は変な勘違いをしているらしい。