ガーデンテラス703号
「あーゆかっ」
ぼんやりとしていると、突然耳元でからかうようなささやき声がした。
ドキッとして振り向くと、いつの間にそばにやって来ていたのか、シホが私の肩に手を載せてにやついていた。
もう既に相当飲んでいるらしく、その頬が赤い。
「シホ?」
いつまでも私の顔を見上げてにやにやしているシホに眉を顰めてみせると、彼女がふふっと声をたててなんだか楽しげに笑った。
「あゆか、ごはんも食べずにさっきからぼーっと何見てたの?」
にやけ顔のシホに意味ありげに問われて、反射的に頬が熱くなる。
「べ、別に何も」
慌ててそう答えたものの、にやにや笑い続けるシホは私が見ていたものにちゃんと気づいているらしかった。
あんなに飲んで食べて、好き勝手やってたくせに。
シホはいつもそういうところはちゃっかりしてる。
「あゆか、ホタルに見惚れてたでしょ」
そうして、わざわざ指摘してほしくないことをしっかり指摘してくる。