memory
「それにしても、すごいな。これ全部空井さん一人でつくったの?」
「うん。料理はいつも私がやるから。」
「あ・・・。ごめん。」
忘れかけてた。彼女は両親を亡くしてるんだ。
その記憶を上書きするために今日ここにきているというのに。
何やってんだ、俺。
「ううん。全然気にしてないから。というか、立花君には感謝してるの。」
「え?」
「あの時以来、怖くて遊園地に来れなかった。だから憧れてたの、誰かと遊園地に行くこと。」
彼女は空を見上げた。
「立花君の言うとおり記憶の上書きが出来た。忘れることは出来ないけど、新しい記憶ができた。」
彼女は俺を見つめる。
「本当にありがとう。」
改めてお礼を言われるとなんか照れる。少し目をそらしてしまう。
「俺は何にもしてないよ。」