そのとき僕は
「あたしのお父さんは日本人、お母さんはスウェーデン人。お母さんが仕事の都合でこっちに来てて、父と知り合って結婚した。しばらくはうまく行っていた。だけど、ほら、日本には子供が親の面倒をみるって文化があるでしょう?それで、母はうまくいかなくなったのよ」
嫁姑問題ってやつよね、そう言って彼女は口を尖らせる。
母の国にはそんな習慣はない。祖父母との同居や面倒をみることについて喧嘩が増えてしまって、それが長い間続いて、両親はもうだめになった。
「それでね・・・お母さんは、国に帰っちゃったの。お姉ちゃんを連れてね。お父さんのところにはあたしが残った。二人が出発しちゃう前に、家族で遊びに行ったのよ」
近くに遊園地、あるでしょう?彼女がそう聞くから、僕はしばらく考えてから頷いた。
「ああ、あったけど・・・。あそこは、5年くらい前に廃園になちゃったよ」
「え、そうなんだ!」
残念そうに彼女の眉毛が寄せられる。それから一度ため息をついて、草が揺れる木の根っこのところを見詰めていた。
「それで?」
僕は続きを促した。それで、結局どうして君はここで待ちぼうけだったわけ?
だけど彼女はちらりと僕を見て、首をかしげて言った。
「ねえ、友達と一緒だったんじゃないの?あの人達、待ってるんじゃないの?」
「あ」
実際のところ、僕は忘れてしまっていた。そうだそうだ、そういえば、挨拶だけしてくるから先に行っててって別れたんだったっけ!