Amarosso~深い愛~の作り方♪

「なんでこんなに食べ物から遠いの。
 大事な客って言うより嫌がらせ」

「支配人的には、すごくいい席を用意したんだと思うけどね」

「どこが」

「周囲からの視線はさえぎられ、だが、よくホールが見渡せる。
 いわゆる特等席」

「でも遠い・・・」

「どうぞ早く行って来て」


怜士はため息混じりに、食べ物の皿が並んだ中央のカウンターの方へ手を振った。

麗華は迷いも無く、まっすぐにローストビーフに向っていった。

それを見送って、スマホを取り出すと改めて先ほどのニュースを読む。

ドイツの新聞に記載された小さな記事。

いつも顔が判別できないように潰される。

歯が治療された経歴があれば、口元も砕かれる。

今回は片腕がないらしい。

となると、手術痕か、個人を識別できるような痣とかがあったのだろう。

やはり駄目か。

このまま今泉怜士として日本で暮らすことは。
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