BitteR SweeT StrawberrY
ケイは可笑しそうに笑いながら、だけど、ちょっとだけ意地悪な表情をして、小さく首をかしげる。

「なんだよその顔?」

「え!?いや、だって!ええ!?と、突然に何言っちゃってんの!?」

「冗談だよ、そんなに嫌そうな顔すんなよ」

「べ、別に嫌そうな顔なんかしてないよ・・・っ!
びっくりしただけ・・・
うん、そうだよね・・・冗談だよね」

冗談って聞いて、実はちょっとだけがっかりしたなんて、言えないよね・・・
あたしは、あははって変な誤魔化し笑いをしてから、なんだか、ため息をついてしまった。

「でも、大ちゃんが、会社に来るなんて思わなかったよ~・・・
ほんと、何考えてるんだろ・・・?」

「なんも考えてないんだろ?
本気で優子のことを考えてたら、この間のみたいな言葉は出てこないはずだし、わざわざ会社の前で待ち伏せとかも、普通はしないだろ?
自分がどんだけ優子を傷つけたか、判ってないんだよ、きっと」

ケイはそう言って、柔らかく笑うと、いつものようにすうってあたしに手を伸ばして、子猫を撫でるみたいに、あたしの髪をくしゃくしゃと撫でる。
あたしは、顔を赤くしたままうつむいて、上目遣いにケイの顔を見つめてしまった。

「うん・・・そうかもしれないね。
きっと大ちゃんは、自分があたしに一体何をしたかも、わかってないんだと思う」

「今日、家に帰ったら・・・居たりしてな?家の前に?」

「えええ!?やだよそれ!!そんなこと言わないでよぉ!」

あたしがそう言うと、ケイは可笑しそうに笑って、こう答えた。

「これも冗談だよ。まぁ・・・ストーカーになる奴の心理は計り知れないから、注意するに越したことはないけどな。不安なら、ガクにでも送って行ってもらえばいいよ」

「ええ・・・?でも・・・・それは、やっぱり、ちょっと・・・」

思わず口ごもったあたしを、ケイは不思議そうな表情で覗きこむ。

「んー?どうした?」

あたしは、ぎゅって自分のスカートの裾を握って、しどろもどろになりながら、思わず、こう言ってしまった。

「それじゃ、ケイに・・・悪い・・・」

「んんー?なんでオレに悪いの?」

「・・・・だって・・・・」

「だって、何?」

「ん・・・・だって・・・佐野さんは・・・
ケイの・・・・・特別な・・・人・・・でしょ?
だから・・・」

あたしのその言葉を聞いて、ケイは一瞬、きょとんとする。
そして、いきなりぷって吹き出すと、突然、それこそ思いきり笑い出したのだ。

「あはははは!優子!何言っちゃってんの!?
いやさ、確かに、ある意味特別かもしれないけど・・・・」

「ほら・・・やっぱり、佐野さんは、ケイの特別でしょ・・・?」

「馬鹿だなぁ・・・おまえ」

くすくすと笑いながら、あたしの髪をますますくしゃくしゃと撫でると、一度、大きく深呼吸して、ケイは、ちょっとだけ神妙な顔つきになる。
そして、その真っ直ぐな瞳であたしの顔を見つめたのだった。

「優子の『ガク・コンプレックス』は相当だな?」

「え?な、なにそれっ?」

「いや、言葉のままだよ。
ガクはガクだし、優子は優子だろ?」

「ん・・・確かにそれは・・・そうだけど・・・・」

うつむいたまま、そう言ったあたしに、ケイは、柔らかく微笑むと、指先でくいってあたしの顎を持ち上げて、少しだけ首を傾げながら、静かな口調でこう言った。

「なぁ、優子?今、おまえが何を勘ぐってるのか、大体想像はつくけど・・・
あえて言うなら、オレにとって、優子だって特別なんだぞ・・・・
ガクとは違う意味で、優子は特別・・・」

「え・・・っ?」

「ガクはさ・・・オレにとっては、もう家族のようなもんでさ・・・
兄妹(きょうだい)的な何か・・・っていうのが大きいんだと思う。
だけど時々、恋愛感情的何かがうずくのも確かなことなんだよ・・・」

「う・・・うん・・・・」

「だけどな・・・・」

「うん・・・・」

「恋愛感情的何かの比重で言ったら・・・・今は、その対象は、優子なんだ。
わかるか?」

「え・・・っ?!」

「そこら辺・・・ちゃんと覚えておけ。『ガク・コンプレックス』もほどほどにしとけよ」

そう言って、ケイは、唇だけで小さく笑った。
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