犬との童話な毎日
黒曜の冷静な声音に、うっ、と唸る。
「な、何でも聞け、って言ったのは自分じゃん」
『俺の気分を害さなければな』
それって何でも、って言わないんだよ。
って言ったらまた怒る、よね。
「……なるべく気を付けようと思いますが、自信はあんまりありません」
『努力しろ』
はい、と素直に頷く。
ふん、と鼻を慣らす黒曜のお尻で尻尾がゆらり、と揺らめく。
それを無言で見つめていたら、なんだかむずむずして来た。
『……おい』
自身の毛が温風にそよぐのを見ていた訳でも無いのに、熱を感じるのか。
即座に飛ぶ低い声に、反射的に背筋が伸びた。
「今すぐやめますっ」
黒曜の尻尾に向けたドライヤーのスイッチを慌てて切った。