犬との童話な毎日
それなら、黒曜自身が気に入った人間に取り憑いた方が、有意義だと思うんだけどなぁ。
いや、他人に押し付けようとしておいて、有意義って表現もどうかと思うんだけどさ。
『…… 好き嫌いでは無く、壮年の男に着いて行く事の方が多いかもな。
波の激しい精神状態の人間の側に居るのは、こっちも疲れるんだよ、消去法だ』
黒曜が少し面倒そうに、それでも答えてくれる。
あたしの問いに対しての答えか、って言うと微妙な物だったけれど。
『お前の前に見えていた男は穏やかだが、ぶれない強さと芯のある男で、まあまあ楽しい日々だったよ』
珍しく自分の事を話す黒曜の邪魔をしたく無くて、黙って聞き入る。
多分、大切な思い出。
この声の穏やかさは。