犬との童話な毎日

きっと大事な人だったんだろうな。
何となく、黒曜はそんな感情、持っていないのかと思ってた。

そんな事、黒曜に言ったらまた、失礼な小娘だ、って怒られそうだけど。

『……まあ、昔の話しだ』

そんな風に、言葉少なに締めくくりながら、一つあくび。
そして大きな体を起こして、あたしの目の前で湯けむりにけぶった窓際に飛び乗る。

眠そうなくせに、また何処かへ行くんだ。

『少し出て来る』

気まぐれに、夜の空に飛び出して行く黒曜を、見送るのは珍しい事じゃない。
けれど、今日は何故か何処に行くの?と聞きたかった。

だから咄嗟に開いた口を、言葉が飛び出さないように閉じる。

黒曜に少し興味が湧いた。
一つ一つ、小さな事だけれど幾つか知った夜。







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