犬との童話な毎日

また一つあくびをして、浮かんだ涙を拭う。

「いこ」

簡潔な言葉で黒曜を促せば、漆黒の瞳があたしを見上げた。

『朝食は食べないのか?』

「ん、食べてたら遅刻しちゃうもん」

玄関で靴を履きながら、スクールバッグを持ち、後ろを振り返る。

黒曜の後ろから、林檎は食べ終えたのか、人形を咥え直した子犬がとてとてと姿をあらわす。

「あんたの飼い主には、今日の放課後会いに行こうね」

あたしの話しが分かるのか、じっとつぶらな瞳が見上げてきて。
昨日の話し合いの時もそうだったな、と思い出す。
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