犬との童話な毎日

「セ……センセェ。
あ、あの……だって……」

上げた手をそのままに、ふらふらと目の前の空間を指し示す。
ほらほら、と。
あたしの目も、指先同様空中を彷徨う。
先生が近くまで移動して来るのが視界の隅で分かった。

「……何も無いが」

あたしの隣りまで来て、あたしの指差した空間を数秒眺めて。
返って来たのは冷静な声に、冷静な言葉。

何でよ、良く見てよ!!

反射的に横に立つ先生を見上げて。
教室中の視線を集めている事に気付いた。
しかも訝しげな表情で、あたしの目の前、では無く、あたし自身を。
この変な物を見る目は、何日か前にも向けられた覚えがあった。


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