犬との童話な毎日

「候補は何個か考えてあるんだけどなー」

大きなお腹を撫でて、優しい顔をする沙月ちゃんはもうお母さんの顔だった。
いつも見せてる笑顔じゃなくて、幸せそうな、愛おしそうな、そんな顔。

「旦那さんは?」

「一緒に考えたりはしてるんだけどね。この子が産まれて、顔を見て決めてもいいかな、って最近思ったりもするのよね」

そっか、とあたしも笑う。
近くで赤ちゃんが産まれる、なんて初めての経験だから楽しみで、楽しみで。

「ねぇ、産まれたら赤ちゃん抱っこさせてくれる?」

あたしもお腹を触らせてもらった。
お布団越しでいいよ、って言ったのに、沙月ちゃんは笑ってお布団をめくってくれた。
柔らかいような、弾力があるような、硬いような。

何だか不思議な感触だった。
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