犬との童話な毎日

看護師さんが黙って、病室は衣擦れの音やかちゃかちゃ、と温度を感じさせない音しかしなくなった。
知らず知らずのうちに無言で聞き耳を立てていた自分に気付いて、沙月ちゃんにこそっ、と声を掛ける。

「結構厳しいんだね」

その囁きに沙月ちゃんは苦い苦い顔をした。
沙月ちゃんにしては珍しくて、ちょっと驚いてしまう。

「昨日、出血したらしくてさ。あまり良くない状態みたい」

「そうなんだ、大変だね」

呟いて何となく隣りに顔を向けたら、黒曜が目に入った。
お行儀良くお座りをして、隣りのベッドをカーテン越しに見ていた。
その耳がぴん、と立っていて何かに意識をやっているのだと知る。

短い付き合いだけれど、気を抜いている時の様子では無い事位は分かった。


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