犬との童話な毎日

黒曜?

ふと呼び掛けそうになって我慢した。
ここには沙月ちゃんが居て、二人きりでは無いから。
それに気付いたのか気付いていないのか。

『還りたがっている』

カーテンから目を外す事無く、低い声で呟いた。

何が?

無意識に心の中で問い掛ける。

『腹の中の赤児だ。ただただ還りたい、と』

何処に帰るの?

『何処と言う事も無い。ただ元の姿に、腹の中に入る前に』

腹の中に入る前……。

『腹の中で泣いている』
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