犬との童話な毎日

あたしはソファには座らずに、キッチンの椅子に腰掛けた。
ちら、と見えたボウルには挽き肉と玉ねぎ。

夕ご飯は多分ハンバーグ。

「沙月ちゃんねぇ、元気だったよー。
行く度に寝たきりなんだけどね。
あのさ、今度何か差し入れでもした方がいいと思う?」
「あら、じゃあきっと赤ちゃんもお腹の中で踏ん張ってくれてるのね。
入院生活なんて退屈だろうし、雑誌でも漫画でも買って行ってあげたら?」
「沙月ちゃんに漫画は無いよ、あたしじゃあるまいし」

それはそうねー、と笑い声。

ふと風が動いた気がして足元を見る。
あたしの腰掛けている椅子の足元に寝そべろうとした黒曜を見付けて、足で追い払った。
実際には当たっても擦り抜けるから、無意味なんだろうけれど。
それでも黒曜は迷惑そうな顔をしてリビングの方に移動して行った。


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