人気女優がタイムスリップ!? ~芸能界⇒島原⇒新選組~
「彰さん、僕のいない間に何があったのか教えていただけますか?」


飛鳥さんと浪士達の姿がみえなくなってから少しったった後に、今まで口を閉じていた沖田さんが、とても複雑そうな表情でそう聞いてきた。


「分かりました。」


聞かなくてもわかった。沖田さんが今とても悔しい気持ちだということを。


沖田さんはだれよりも仲間思いな一面がある。そんな沖田さんが乙葉ちゃんのみが危険にさらされてたなんて知って、悔しくならない訳がない。


だからこそ沖田さんは、この出来事の全貌を知っておく義務を感じているんだろう。


「最初は、一匹の白い猫から始まったんです。」


私自身もうまく説明できているかわからないけど、真剣に私の下手くそな説明を聞いてくれている沖田さんは、相変わらず苦しそうな表情で。


まるで自分なことの様に苦しんでいる沖田さんに、本当にあの浪士組でやっていけるのか。いざというときに沖田さんは人を斬れるのか。


少なからずこの先の未来を知っている、未来人としての私は本当にこれから先の行動を見つめ返されないといけない。


切ないような、悲しいような、苦しいような。そういった複雑な感情が私の脳内をかすめた一日だった。


「そうですか………

話の流れでだいたいのことは若田つもりでいましたが。それにしても驚きました、彰さんがあの飛鳥という男を殴るなんて。」


そう言ってクスクスと微笑む沖田さんの中はまだ、複雑な感情が存在しているんだろう。


だけどそれを表に出さないのは、私がしっかり乙葉ちゃんの無念を晴らしたと聞いたからだと思う。


「違います!
殴ったんじゃなくて、平手打ちですよ。」


「あまり変わらないですよ。」


あまり気を使いたくなかった私は沖田さんの冗談に乗った後、泣き疲れてしまって眠ってしまった乙葉ちゃんに視線を向けた。


「乙葉さん、また眠ってしまいましたね………
今日は何かと大変な一日でしたし、早く屯所に戻って乙葉さんを休ませないと。」


「そうですね、私も今日は疲れましたよ。
さ、早く屯所に戻りましょうか!」


夕日がある空を背にして、乙葉ちゃんを背中に抱えた沖田さんと二人、早足に屯所への道を戻った私達だった。
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