風の詩ーー君に届け
13章/紫陽花
早朝から降りだした雨は、昼を過ぎても、止む気配がない。




薄暗い空に時折、稲光が走る。




「梅雨の始まりには豪雨に伴い雷が落ちる」



病院の待合室。

高齢者から子どもの頃に聞かされた。



朝から天気予報が各地の様子を伝えていた。



今日は1日、雨らしい。




厚い雲に覆われた空。



ショパンの雨だれを思い浮かべる。




郁子が、喫茶店「モルダウ」の窓辺に飾られた鉢植えの紫陽花を眺めながら、「かわいい紫陽花ね」と少女のように微笑む。




薄紅色の花弁に薄桃色が微かに色をさす、優しい色合いに心が和む。




以前に品評会だったかで、鑑賞した品種に少し似ている。



名前は思い出せない。




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