風の詩ーー君に届け
妹尾は詩月の額に触れ、熱を確かめる。




「……嘘でしょう!? こんな熱で、あの演奏を……」




妹尾が泣きそうな声を出す。





「1曲弾くたび、どれだけ心臓に負担がかかっているか。

……一生懸命練習した楽譜が今日みたいに当日、変更になる。

ふざけるなよ!!」




声を荒げた理久に 詩月が「やめて」と言葉を絞り出す。





「あんたがローレライだって思っている音色は、こいつが命懸けで奏でている音色……」




詩月の手が酸素ボンベを払いのけ、「やめろ!!」と叫んだ。





思い切り張り上げ叫んだ掠れた声が、理久と妹尾の耳に微かに届いた。




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