風の詩ーー君に届け
6章/熟田津に
夜空を見ながら大音量で聴きたい曲がある。




満天の星空の下で聴けたならと思うが、そのような空は見えなくて実に残念だ。





七夕って……。

旧暦の7月7日って、実際には8月なんだよなと思いつつ、空を見上げる。




窓枠から見える、小さな空だ。



今年は、彦星と織姫は出逢るだろうか



空を見ながら思う。




鞄に忍ばせた雨傘。

梅雨入り宣言も近いらしい。

新調した傘は、まだ数回しか使っていない。




雨降りで湿度が高いのか、自分自身の不快指数も上がっているような気がする。





昼間、病室を訪れた緒方は何故か……いつもより明るく振る舞っているように思えた。




BGMのない喫茶店「モルダウ」で、学生の生演奏を聴くばかりでは、つまらないとか、プラネタリウムに行きたい」とか、無邪気に話し、「七夕は雨が降るかしら」とポツリ、寂しそうに言った。



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