【完】私と先生~私の初恋~
「そうだよ。

たんまり稼いで楽させてもらわなきゃ、ねぇ?早苗。」


甘ったるい声で名前を呼ばれて、私はビクっとした。


「大事な大事なお母さんだもんねぇ?


自分のせいでお母さんこんなになっちゃったんだもんねぇ?」


語尾が段々と、いつもの母に戻っていく。


頭にガンガンと響いてくるその声に、私はまた考えるのが嫌になって来る。


頷かなきゃいけない……だんだんとそう思えてくる。


「早苗はお母さんが可哀相だねぇ?


お母さんを幸せにしてあげなきゃいけないよねぇ?」


母の声が本格的に猫撫で声になった時、先生はハァっと大きく溜め息をついた。


「…話は以上ですか?」


先ほどまでとは別人の様な、先生の冷たい声がした。


その声が凄く怖くて、私はそっと先生を見た。


先生はゾッとするような薄ら笑いで、母を見つめている。


「はぁ?」


「話は以上ですか?このまま不幸自慢をされ続けても困りますので。」


先生が鼻で笑う。


母はまた、般若のような顔に戻っていった。


「不幸自慢…?」


「ええ、そうですよ。


聞いていたら全部自業自得じゃないですか。


お嬢さんはアナタのせいで、もっと辛い思いをしていますよ。」


「はあああああああ!?」


「結局のところ、アナタは金づるが欲しいんですね。

何だかんだ色々言っていますが、

僕にはそうとしか聞こえません。」
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