【完】私と先生~私の初恋~
「…わかった風なこと言ってんじゃねーぞ?」


母が今にも飛び掛りそうな勢いで、拳を握り締めている。


「わかりますよ。


僕はアナタの様な人を、よく知っていますから。」


母の歯軋りが聞こえる。


「いくら欲しいですか?


1億でも2億でも、好きなだけ差し上げますよ。


アナタが彼女を解放してくれるなら。」


先生の冷たい声に、その場が凍りつく。


そんな大金をいとも簡単に口から出す先生に、私は少し恐怖を覚えた。


母は予想もしなかった言葉に、戸惑って固まっているようだった。


「借金もある…そうおっしゃっていましたよね?


もしかして〇〇さんのお店にですか?」


固まっていた母はその名前を聞くと、一瞬だけビクッとした。


「彼女から仕事の話をされてまさかとは思いましたが…


〇〇さんのお店ですよね?」


「それは…」


母はさっきまでの威勢が嘘のように、急に大人しくなった。


「大方、前払いで幾らか貰ったんでしょう。


彼女が居なくなって困るのは、そのせいじゃないんですか?」


〇〇さんって誰?あのお店のガラの悪い店長?


二人の間では淡々と話が進んでいく。


私は一人だけついていけなくて、混乱していた。
< 75 / 88 >

この作品をシェア

pagetop