【完】私と先生~私の初恋~
「ちょ!ちょっと先生!」


私は慌てて先生を追いかけた。


「どこにいくんですか?」


「借金、返してきます。


お母さんはもう何もしてこないでしょうし、一人でも大丈夫でしょう。」


「はい。だってさっさと返しちゃったほうがいいじゃないですか。


「でも…」


「大丈夫、〇〇さんとは知り合いですから。心配しないで。」


「知り合い!?」


あのガラの悪い店長と、人の良さそうな先生が知り合い…!?


私はさっきよりもっと驚いて聞き返した。


「そうですよ。僕、こう見えて顔が広いんですよ。


まぁ詳しいことは後で話しますから。


あとは宜しく頼みます。」


先生は驚きの余り固まっている私の頭を撫でると、そそくさと外に出て行った。


玄関の閉まる音で我に返り、そーっとリビングに戻ると、母はまだ椅子にじっと座っていた。


どうしていいのかわからず、私は部屋を片付け始めた。


酒瓶を拾うたびに、むせ返るような臭いで吐き気がする。


私は我慢できなくなって、台所の窓を開けた。


ふとシンクの中を見る。


私が出て行ってから何も食べていなかったのか、シンクの中は意外と綺麗だった。


あらかた片付け終わったところで、私は床に雑巾をかけ始めた。
< 78 / 88 >

この作品をシェア

pagetop