【完】私と先生~私の初恋~
「…貴女をお金で買うような事をしてしまいました。


……もう二度としませんから…許してください。」


私は泣きながら、ブンブンと首を振った。


「…先生の…大事な…お金を……


先生のお父さんが…遺してくれた…大事な……」


息が詰まって言葉にならない。


「いいんです。


それは僕が勝手にやってしまったんですから。


…お願いだから、泣き止んで、謝りますから…」


先生が段々と困った顔をしていく。


それでも益々涙は止まらなくなっていき、私は幼い子供のようにわんわんと泣き続けた。


「ごめんなさいぃ…」


抱きしめられると、もっと申し訳なくなってくる。


「だから大丈夫だってば。ほら、泣かないで。お願いだから。」


先生は困ったように笑う。


それでも私の涙は止まらなかった。


「大切な人を守るためなら、手の1本や2本、どうって事ないじゃないですか。早苗さんだって、そう思うでしょ?」


先生はちょっと照れくさそうにそう言った。


私はその言葉で更に胸が苦しくなって、立っていられなくなった。


先生は「おっと…」と言いながら、私を支えるように一緒に座り込んだ。


あぁ先生が困ってる…泣き止まなきゃ……もう何で涙が止まってくれないの…


泣きながらもどこか冷静な頭の片隅で、私はずっとそんな事を考えていた。
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