彼はお笑い芸人さん
課長とそれぞれの席でコンビニ弁当を広げる。
微妙な距離感と静寂、そして刻々と過ぎ行く時間。
もうじき九時か。
急いで帰れば、間に合うかな。笑イトの放送。
オープニング十分くらいは、過ぎても大丈夫だろうし。
とーぐんの出番が番組の後半ならいいな。
録画予約はバッチリしてきたけれど、やっぱり生で観たいなあ。
頭の片隅でそんなことを思いつつも、私のせいで現状況に陥っている課長への申し訳なさも募る。
静かすぎて気まずい。
何か喋らないととは思うけれど、お弁当をつつきながらも仕事を続けている課長の、邪魔をするのも悪いし。
とっとと食べて、さっさと退散した方がいいのかなあ。
それはそれで失礼な気もするし。う~ん……
とりあえず食べることに専念しながら、チラチラ課長の方を窺う。
“英課長のプライベート情報、仕入れたら教えてね”
ふいに思い出した。
……そうだった! 森さんとの約束を果たすなら、今しかない。
業務時間外、しかも二人きり。お弁当タイム。
今なら、プライベートなことを尋ねても、そんなに変じゃないだろう。
“かっこいいじゃん。英課長。アメリカの大学卒で、農機でも超ヤリ手で通ってて、会長の甥だか何だかでしょ。超有望株じゃん。三十二で課長だし。婚約者とかいるのかなあ?”
森さんから得た情報を反芻してみる。
アメリカの大学卒かあ、確かにかっこいいなあ。
会長の甥で超有望株ってことは、将来はまた「農機」の方に戻って、重役とかになるんだろうなあ。
いつかは社長とか?
何それ素敵。しかも、どこかで聞いたような話だなあ……あ、