俺様とネコ女
「ガキに払わせねえよ」

「そういう訳にはいかないよ。約束は約束でしょ」

「黙って奢られるのが大人の女だって言ったら?」


一瞬真面目顔になる。それからパっと表情を変え、無邪気な笑顔になった。

「コウかっこいいね。ありがとう。ご馳走さまでした」


その笑顔が、たまらなく、可愛かった。

は?何だ可愛いって。何だこの感情。突然自分の中に振って沸いた感情に戸惑う。

「ねぇハミガキしたい。化粧水ない?」

「あるわけねえだろ」


ないと答えたのに、嬉しそうに笑う。

「女の影なし!」


くそ。可愛い。こんな短時間で何度も思ったのなら仕方ない。女を可愛いと思うこの気持ち。認めたくないけど認めてやる。

でもこいつの可愛さは計算か?天然か?グラグラと揺らぎ始めた理性を手放さないよう握り締める。俺のポリシーにそぐわない行動をしないように。

「ねえコンビニ行きたい」

「1階コンビニ」

「ついてきてくれないの?」

「は?」

「ね。お願い。怖い」

「は?何なんだお前」

「コウ。名前で呼んでよ」


またペースが狂う。今はお前の呼び方を議論してなかっただろ。
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