俺様とネコ女
重ね重ね面倒だ。自分の買い物は自分で行け。

「お願い」と訴える女の目。それがまた俺の理性を揺さぶる。何が何でも行ってやるかと思いを固める。

諦めたのか。先程バッグに戻したばかりの財布を手に、玄関へ行こうとした。おい待てその恰好で行くつもりか?

「”ここ”何がいるんだ?」

「ここってかわいいね」


俺が初めて呼んだその呼び方に、女は満面の笑みで振り返る。


「やっぱり自分で行け」

「ごめんなさい。何でもいいから化粧水買ってきてください。顔だけは潤さないと痛いの。パンツもお願いしたいけど」

「無理」


頼まないといいながら、その目は「買ってね」と訴えている。絶対買わない。そんなもん買えるか。

「大人しく待っとけ」

スマホを手に、部屋を出た。
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