秘めた恋
私はお茶の入ったトレーを持ち副社長室に向かっている途中、
昨日の出来事を思い出していた。

オオハシさんのことを考えていた。

美雪さんを見つめるあの横顔・・・

気づくと私は副社長室のある扉の前で
立ち止まっていた。

「どうしちゃったんだろう、私。」

重いため息を吐くと私は頭を切り替え、
副社長室の扉をノックした。

中からどうぞと返事があり、私は「失礼しまーす」と言って
扉を開け中に入った。

すぐ目の前の奥側に副社長は座っていた。
彼の前には大理石で出来たようなテーブルと座ったら深く沈みそうな
ソファが置いてあった。

副社長は英字新聞を読んでいて、ちょうど顔が見えないために
噂のイケメンとやらが拝見できない。

彼の近くまで歩き「お茶はどの辺へ?」と尋ねると「そこ」と言って
彼の細くて長い人差し指が彼の目の前にある机の上を指した。

「あ、はい。」

私はそっと置くと「では、失礼しました。」と彼に深々とお辞儀をした。
すると踵を返した瞬間、いきなり「おい。」と声をかけられた。

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