彼方の蒼
つきあおうかという明確な質問に、倉井先生は初めて反応を示した。
ふるふると首を横に振った。
「あーまたそんなリアクションして。恥ずかしがらなくていいんだよ?」
僕は両手をぶーんぶーんと持ち上げてはしゃいでみた。
繋がれたままの倉井先生の両手も一緒に上がった。
「惣山くん」
明るく楽しく元気よく、ハイテンションでかかるつもりだった。
なにを言われてもそれでかわしてすっと迫っちゃえと思ってた。
現実は必ずしも思うようにはいかない。
倉井先生に名前を呼ばれた途端、潮が引くように落ち着いていき、僕の顔から笑いが消えたのがわかった。
「恥ずかしがらなくて、いいのに」
繋いだ手を離した。
一番近くにあった木製のベンチに並んで座った。
「惣山くんの気持ちはよくわかりました。今度は私の話を聞いてください」
真横に呼吸をするのを忘れるほどに美しい和装の倉井先生がいる。
なのに、情けないことに僕にはそちらを見る余裕がなかった。
スニーカーの先で芝生を撫でながら、いいよとぶっきらぼうに返事をした。