彼方の蒼
久しぶりの教室を見回すと、どうもカンちゃんには乱暴者のレッテルが貼られてしまったようだ。
物を頼むにも、クラスメイトはおどおどびくびくしていた。
カンちゃんは気にも留めない様子だったけど、こういう腫れ物に触るような扱いをされて、いつまでも穏やかでいられるはずがない。
僕だって土曜日の日に半分キレたんだから。
カンちゃんは僕のために良かれと思って動いてくれた。
倉井先生しか見えなくなっている僕に、体を張って忠告してくれた。
争うことでカンちゃんが得られるものなんて、なにもないとわかっていたはずなのに。
違う、カンちゃんはなにも悪くないんだ――そう言うのは簡単だけど、説明のいらない証明をしたかった。
「おまえのやりかたでいーんじゃね?」
「……あ。そっか」
しわくちゃの原稿用紙をまえにして、十数分唸っていたら、またもやカンちゃんに助けられた。
高校でカンちゃん抜きでやっていけるんだろうかと気の早い心配をしつつ、僕は作業に取りかかる。
シャープペンシルを2Bの鉛筆に替えて、五分で完成。
出来は上々。
倉井先生はさすがに唖然としてた。
「そういえば、反省文とは言っていませんね」
「そういうこと。言ったのは委員長だから。こういうのも僕ならではで、いいでしょ?」
用紙の枠なんか全部無視して、カンちゃんをスケッチしたんだ。
「面と向かい合って描いたんだから、仲直りの証明になる。だからこれで充分」
力強く頷く僕。
内心の自信なんて、たいしてないけど、それはいつものことだ。
まずは形から。虚勢から。
倉井先生が笑いをこらえているのがわかった。
笑えばいいのに。笑え笑え。
スケッチはその後、カンちゃんが書いた反省文と共に、教室の後ろに貼りだされた。
「これ、すっげー嫌。俺ばっかり晒しもんじゃねえか」
掲示されて間もないときにカンちゃんがそう言ってきたから、僕はなだめるように答えた。
「そうでもない」
でもそれは本心じゃないから、
「……とは言い切れないな」
と、付け足した。
カンちゃんは、そうだろうそうだろうと、赤べこみたいに首を振った。
物を頼むにも、クラスメイトはおどおどびくびくしていた。
カンちゃんは気にも留めない様子だったけど、こういう腫れ物に触るような扱いをされて、いつまでも穏やかでいられるはずがない。
僕だって土曜日の日に半分キレたんだから。
カンちゃんは僕のために良かれと思って動いてくれた。
倉井先生しか見えなくなっている僕に、体を張って忠告してくれた。
争うことでカンちゃんが得られるものなんて、なにもないとわかっていたはずなのに。
違う、カンちゃんはなにも悪くないんだ――そう言うのは簡単だけど、説明のいらない証明をしたかった。
「おまえのやりかたでいーんじゃね?」
「……あ。そっか」
しわくちゃの原稿用紙をまえにして、十数分唸っていたら、またもやカンちゃんに助けられた。
高校でカンちゃん抜きでやっていけるんだろうかと気の早い心配をしつつ、僕は作業に取りかかる。
シャープペンシルを2Bの鉛筆に替えて、五分で完成。
出来は上々。
倉井先生はさすがに唖然としてた。
「そういえば、反省文とは言っていませんね」
「そういうこと。言ったのは委員長だから。こういうのも僕ならではで、いいでしょ?」
用紙の枠なんか全部無視して、カンちゃんをスケッチしたんだ。
「面と向かい合って描いたんだから、仲直りの証明になる。だからこれで充分」
力強く頷く僕。
内心の自信なんて、たいしてないけど、それはいつものことだ。
まずは形から。虚勢から。
倉井先生が笑いをこらえているのがわかった。
笑えばいいのに。笑え笑え。
スケッチはその後、カンちゃんが書いた反省文と共に、教室の後ろに貼りだされた。
「これ、すっげー嫌。俺ばっかり晒しもんじゃねえか」
掲示されて間もないときにカンちゃんがそう言ってきたから、僕はなだめるように答えた。
「そうでもない」
でもそれは本心じゃないから、
「……とは言い切れないな」
と、付け足した。
カンちゃんは、そうだろうそうだろうと、赤べこみたいに首を振った。