印毎来譜 「俺等はヒッピーだった」
1974年1月16日 寒さは感じない。
なんせ、効いてる。ウヒヒ

アメ公「おい あれ見ろよ」

ボロいホテルの窓から、茜色の光は部屋の中まで
ベッドの上まで、ヒューっと一直線に入ってくる。

むおお!ヒマラヤが燃えてるぞ。
こりゃ確かに神が居るわ。すげえ・・・

シットを手で割って銀紙で炙って、ナイフで削る。
神秘な神聖な怪しい匂いが部屋中に広がる。

次はガンヂア。お茶より緑、こんなの初めて見た。
これをこいつと混ぜてチラームに詰め込む。 へへ

おい、お茶っ葉だったら笑っちゃうぜ。うっひっひ 


))あ・・・頭・・痺れて・・やけに・・早い・・
まだ一服 こりゃ・・))ヒマラヤが部屋に・・来て
むわあ・・笑いが・・・止まんねえ っくっくっ

脳みそだけが笑って、体は動かない。

おおいムズタニー・・俺の口・・閉じてくんねえか
顎が外れそうだ・・・アゴー・・ああ・・体固まった 

ひょー))))妹が空・・飛んでる・・死んだ妹

・・・9時? 夜の? 地球一周したんだぞ ひゃひゃ


まあ、そういうことで 飛びます飛びます飛びました。 
完全スペイスドアウト。

でもこれ、地元じゃ遊びじゃねえ。空腹を忘れ飢餓を忘れる為。
おやじ等もガキも道端で水パイプをプカプカする。

アフガンの傭兵もベトナムの米兵も地獄を見た奴等みんなやる。 
でも俺等は遊び。ドクチューになったら元も子もねえ。 




1月17日 みんなは荷物送りに郵便局へ、俺はヒマ。
覚えてるうちに昨日の日記つけとこ。 っひっひ

庭の陽だまりでちょい寒いけど、ニヤついて日記を書く。

ああ、きのうラリって見た、紙飛行機でもやるか。 
ヒマラヤに向かって紙飛行機が飛ぶ。ヒュー

ガキ等が集まってきて教えろって。さすがのカトマンズっ子も
つばめヒコーキの折り方まではご存知ねえ。 へへ

ほーら、つばめヒコーキってのはさ、頭を重くすると飛ぶんだ。

そのうちおやじ等まで新聞紙持ってきた。 ほっほ

みんなで大ヒコーキ大会。半日遊んだ。




いつもの昼飯食ってダーバースクエアへ行く。
お袋が言ってきたお土産を買う。俺も律儀だ。

手紙に餞別くれた人の一覧が書いてある。
2年前だぜ、もう覚えてもいねえ。だいち金もねえ。
でも義理と人情。まあ一個だけ買ってこ。

子供がひとりで店番してる

「ハーイジャポン オミヤゲ トモダチプライス」

小学校行かねえくらいの女の子。インド式日本語。
誰に教わったわけでもねえ、食いぶちとなりゃなに語でも話す。

よっし、おじょーちゃん心配すんな。買ってやるよ。

菩提樹の実で作った数珠。こりゃいい
ちゃんと百八つ玉があるよって説明する。 へえ
おじょーちゃん一人前だね。

よっし、25ルピーOK. あれは?
 
タブラ28ルピー。 ネパールのタブラ。
肩掛けで両面打てるやつ。しかも安い。

真中にタールのドットが塗ってあってチョーキングできるし、
音もいい。気に入った。機内にも持ち込めるし。

よし、買っちまえ。お嬢ちゃんの勝ち。っひっひっひ


晩飯の後、タブラ叩いて闇酒飲んで騒ぐ。

アメ公が歌う、カナ公が踊る。

「いいじゃん、お前うまいね」

あったりめえよ。俺はバンドマン、ドラマーだぜ。

キミノーユクーミチワー ひええ、それだけはやめてくれ。

・・・カトマンズ最後の夜、こうして更けて言った。


金さえあればなあ、半年居たい所だ。

明日はパトナ行ってカルカッタだ。

荷物は布袋とタブラと毛布だけ。
典型の貧乏ヒッピーだ。こりゃ  うっへっへっへ







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