兄貴がミカエルになるとき
「話変わるけど」って、話なんてはなから統一されてはいない。

話を追っかけようと試みてはみるものの、すぐにイライラして疲労感が襲ってくる。

「ママ、そろそろ私はホテルに戻ろうかと思うのですけど」

この場を避難したくて丁寧に口を挟んでみたが、それをスルーしてトオ兄が先に「僕は由美子さんのお店に行っていていいかな。どうせ由美子さんたちもこの後アイに寄るでしょ」と、と尋ねる。

「あらあ、トオル君、うちの店に寄ってくれるの? なぎさが喜ぶわあ」

なぎさとは、由美子さんの店で働く女の子、いや30代のおかまさんだ。

化粧をとると佐藤浩一似のハンサムさんだが、化粧をするとブラックのソウル歌手のような迫力がある。

トオ兄は女性にもオカマさんにもよくモテる。
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