兄貴がミカエルになるとき
それは嘘ではない。

今日は幸っちゃんの家にトオ兄という教師付きで宿題を片付けに行く予定になっていた。

ついでにモンモンの犬夏期講習、いや犬かき講習も含まれている。

「ずっと待ってたのにがっかりだな」

後ろ髪をつかむような甘い声も無視して歩き続けた。

「じゃあさ、君の秘密、ばらしちゃおうかな」

思わず足が止まった。後ろを振り向くと、5メートルほど離れた場所で三品君は腕組をしながら微笑んでいた。

さっきは爽やかだった笑に今は悪意が感じられる。

「わ、わたしの秘密ってなによ」

「君、モデルだよね」

単刀直入。心臓を急につつかれたような衝撃だ。

「な、なにを根拠にそんな馬鹿みたいなこと」

焦ってはいけない。

なのにもはやどもらないでは言葉が返せない。

落ち着け、落ち着くんだ。バレるような証拠は何もないはずだ。

くすっ、と三品君がまた笑う。まったくいろんな笑を使い分ける男子だ。
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