兄貴がミカエルになるとき
その犬型のチョコレートが並んだ下の段には、サッカーボールのラッピングを施した、やはりドイツのチョコレートが置かれていた。

赤や青のキラキラ光る紙に包まれた、小さなサッカーボールが詰まった網の袋を目の前に持ち上げてみた。

「それ、誰にあげるの? あ、もしかして真田?」

お目当てのチョコレートを買い終えた美奈ちゃんが、いつの間にか後ろから覗き込んでいた。

「え、なんで真田が出てくるの?」

私は目の前にかざしていたチョコレートを下ろして振り返った。

「だって真田ってサッカー部じゃない。それに咲季と真田って仲いいし」

確かに同じクラスの真田圭は、一緒に図書委員をしているということもあり、2人で居る機会が多い。

お調子者っぽいけど委員の仕事も真面目にやるし、さっぱりしていて話しやすい。

サッカーにしか興味がないのかと思いきや意外と読書家で、本の話で盛り上がれる数少ない男子だということは
間違いない。

「まあ確かに仲はいいけど、でもラブじゃないよ」

「いいの、いいの。何でもないところから恋心は芽生えるものなんだって」

ちょっと待って。

「なんで私が真田に恋心を芽生えさせなきゃならないの?」

「年に一度の女子イベだよ。誰かにあげたほうが楽しいからいいじゃない。真田、喜ぶよ」

それからまるでチョコレート売り場の店員のように「買え、買え、あげろ、あげろ」とそそのかされて、結局サッカーボール型のチョコレートを買ってしまった。

< 20 / 307 >

この作品をシェア

pagetop