兄貴がミカエルになるとき
少し薄くなりかけた日差しの中で、彼女はそれまで僕が見たことのない柔らかな笑顔を浮かべながら、手を軽く合わせて瞳を閉じた。
そして、彼女の頬を、きらきらと光るしずくが伝っていった。
まるで何かを祈るような静かな時間が流れ、誰も言葉を発することができなかった。
僕は自分が押すシャッターの音が彼女の祈りを邪魔するのではないかと恐れながらも、続けざまにシャッターを切っていった。
そして、彼女が瞳をゆっくり開いて微笑んだとき、アキはエンジェルじゃない、って僕は心の中でつぶやいた。

彼女は―――

その時後ろで声がした。

「まるでマリアね」

僕はびっくりして振り返った。ティムが同じことを感じていたなんて。
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