兄貴がミカエルになるとき
9月も後半に入り、夏休みボケもすっかり抜けた。

クラスにリカコがいない状況も当たり前になっていた。

三品君の存在も記憶の隅にうっちゃられていた。

この日は幸っちゃんも美奈ちゃんも先生に呼ばれて教員室に寄っていたので、私一人で先に校門を出た。

すると記憶の隅にいた男子が前と同じように正面の壁に寄りかかっていた。

今回は無視することなく軽くお辞儀をして彼の前を通り過ぎたその肩を、「ねえ」と叩かれた。

女生徒ばかりが一斉に下校している通りの中で彼の姿は目立つ。

人目が気になったので、そのまま歩いて次の細い横道に入ってから立ち止まり、後をついてきた三品君を振り返った。

「何か用?」

「僕のこと覚えてる? 友達になろうって2度目のお願いをするために君を待ってた」

ネイビブルーのポーターのバッグを肩から斜めがけにしている三品君は、両手をポケットに突っ込んだまま、それでも神妙な面持ちで私の顔を覗きこんでいた。
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