兄貴がミカエルになるとき
しかし、何でも邪魔はつきものだ。

図書委員会が終わったあと、私は図書室に立ち寄り、真田は先に教室に戻っていった。

本を返却して戻り、教室に入ろうとしたところで生徒の話し声が洩れてきて、思わずドアの外で立ち止まった。

「真田さあ、さっき希沙良さんからなんか貰ってたでしょ。見せてよ」

この声は、花園リカコだ。いったいどこから見てたんだ?

「なんでお前に見せなきゃなんないんだよ」

真田が抵抗する。そうだ、もっともだと、ドアの影に立ったまま私はガッツポーズを作る。

「ふうん、特別なものだから見せられないんだ?」

そんなの、あんたに関係ないでしょ! と、やはりドアの影からリカコを睨む。

「そんなんじゃないよ」

「だったら見せてくれてもいいじゃない」

しつこいぞ、リカコ。

「だからさあ、なんでお前に見せなきゃいけないんだよ」

そうだ、いいぞ、真田! 

「バレンタインのラブラブチョコでしょう? 熱いわねー」

ラブラブチョコ? 熱いわねえって、中学生が使う言葉か。どこのおばさんだ、リカコ。

「ちげーよ。友達チョコだよ」

「そんなこと言って付き合っちゃたりして。真田ってさ、ああいうでかい女が好きだったんだ。あんたよりうんとでかいじゃん」

余計なお世話だ。

真田よりちょっとでかいだけで、うんとじゃない。

真田、なんか言い返したれ! と、私は彼がリカコを蹴散らす次のセリフを期待していた。

でも、彼が発した次の言葉は、リカコではなく私の心を大きく蹴散らした。

「そんなことあるわけねーだろ。自分よりでかいやつなんて女だと思ってねーよ」

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