兄貴がミカエルになるとき
家に戻ると、私は真田から取り返したチョコレートと黄金プリンを持ってトオ兄の部屋に駆け込んだ。

チョコレートが詰まった段ボールが置いてあるところを見ると、大学には一応行ってきたらしい。

毎年バレンタインデーには同級生はもちろん、先輩、後輩、さらには女教授から送られたチョコレートでいっぱいになった段ボール箱がトオ兄の部屋に登場するのだ。

「はい、トオ兄には黄金プリン。で、これはそのダンボールに投げ込んでおいて」

真田から取り返したチョコレートの包みを、トオ兄に突き出す。

「どうしんだよ。さては振られたか?」

「うるさい。いいからそれ、その陽の目をみないチョコたちの大部屋に入れちゃって」

泣く気なんてなかったのに、段ボールの箱に入れられたたくさんのチョコたちを見たらなんだか肩透かしの思いが箱に無残に投げ込まれているような気がして涙が出てきた。

「どうしたんだよ」

読んでいた本を下して、トオ兄が私の顔を覗き込んだ。

「トオ兄、このチョコたちどうするの?」

「食べるよ」

「全部? こんなにたくさん?」

「チョコなんて腐らないから、少しずつ食べる。
みんながわざわざ俺のために買って渡してくれたんだから、食べるよ。ありがたく全部食べるさ」

「でもすべての思いには応えられないでしょ」

「それはできないけど、思ってくれたという気持ちは受け取るよ」

「トオ兄、結構いいやつだね」

「なんだよ、それ」


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