兄貴がミカエルになるとき
翌日学校に行くと、なぜか私が真田にふられたという話がクラス中に広まっていた。

男子たちは面白がって、

「お前、真田を脅したんだってー」

「男から男にチョコあげてどうすんだよ。あれ、もしかして女だったっけ?」

なんて、次から次へとヤジを飛ばしてくる。

真田の方は、「お前も悲劇のバレンタインだったなあ」と茶化されながら、数人の男子に取り囲まれていた。

リカコと取り巻きの女子がこっちを見てくすくす笑っているのが見えた。

せっかくトオ兄と優しいマカロンで気持ちが癒されたのに、また一から傷ついた。

「リカコが言いふらしたのよ。サイテー」

美奈ちゃんがリカコたちを睨んだ。

「うるさいわよ、あんたたち。自分が貧弱だからって、ひがむんじゃないわよ。それに自分たちがモテないからって騒いじゃって、ばっかみたい」

久美ちゃんは真田+その他のやじ馬たちに歩み出て叱責し、それから真田に向かって

「真田、あんたみたいな意気地なし、スポーツする資格はない。サッカーなんてやめちまえ!」

と、睨みつけた。

さすが、2年生にしてバレー部のエースと誉れ高い久美ちゃんは、いつも正義感に溢れている。

それに比べ、身長160センチの久美ちゃんがきりりと立ち向かうその後ろに並び、頭ひとつ出してボーっと立っている私って、情けない。

そして、「うるせえな…」とだけしか言えずにうつむいてしまった真田は、もっと情けない。

久美ちゃんの迫力あるこの怒声でゴタゴタが終了しかけたかと思った。

が、その矢先、まるでこの火種を消してなるものかというようにまたリカコが油を注いだ。

「そうよー。真田君たらせっかく希沙良さんがチョコレートをくれたのに、あんなでかいやつは女じゃないなんてあんまりよねえ。ひどいわあ。でかくたって一応、心は女子なんだからあ。ねえ」

リカコがにっこり笑いかけてきた。
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