兄貴がミカエルになるとき
勝ち誇ったような笑いを浮かべてリチャードがソファから立ち上がり、さらにしつこく自慢げに希沙良ファミリーを見回す。
今度はママも回し蹴りはしなかった。
その代わりリチャードからの視線を避けるようにして、両腕で自分の体をぎゅっと抱きしめた。
それを見て、パパも自分のパンツの前を両手で抑えた。
「歩き方は後でレッスンしてもらうとして、スタイルは問題ない。あとは表現力だ。でも、サキにはよくわからないけど魅力がある、と思う。その魅力を表現できれば、多分、多分大丈夫、な気がする」
よくわからない? 多分? と思う? 気がする?
先ほどの自信満々の笑とは裏腹に、リチャードの言葉は限りなく頼りない。
だけどとりあえず「ちゃんちゃらおかしい体」ではなかったようでほっとした。
「日本はこれからすぐにゴールデンウィークがやってくるからちょうどいい。そこに合わせてオーディションを受けられるようすぐに手配するけど、エアチケットはサキと、保護者はアキでいいのかな?」