兄貴がミカエルになるとき
結局、ゴールデンウィークにも仕事が入っているパパの代わりに、ネイティブの語学力を持つトオ兄が通訳代わりに同行し、モンモンはパパとお留守番、ということで話は落ち着いた。

何度も言うようだけど、そこに私の意見は含まれていない。

ド素人の中学生にそれは無理じゃないかと冷静に考える私の横で、パパはシナボンを買ってきてくれとお土産を頼み、ママは「早くミュージカルを見たいわ」とウキウキし、トオ兄は「新作映画が見られるな」とラインナップをネットでチェックし始めた。

こうして私は、何がなんだかわからないまま生まれて初めて行く海外で、ド素人ながらモデルのオーディションを受けにいくことになった。


4月10日。

ちょうど桜が満開だった。

リチャードは、オーディションの約束を結んだ後はビニールシートとビールとスナック菓子を持って3日間連チャンで多摩川に出かけて花見を満喫し、「日本の春は最高だね」と、ご機嫌でニューヨークに戻っていた。
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