兄貴がミカエルになるとき
第三章

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「外国人がいっぱいだね」

当たり前だけど、JFケネディ空港に降りたとき、その光景に舞い上がった。

初めての海外。

初めてのニューヨーク。

英語が飛び交い、いろんな国籍の人でごった返している。

『スパイダーマン』『ユー・ガット・メール』『セレンディピティ』の舞台にやってきたのだ。

それだけで気分はマックスまで高揚し、ママとトオ兄も久しぶりに訪れたニューヨークにテンションが上がっていた。

この時点で、というか最初から―オーディションのためにニューヨークに行く―という主旨は意識からすっかり零れ落ちていた。

そんなことよりめんどうなことはとっとと済ませて早く観光しようと、家族3人、皆が浮足立っていた。
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