兄貴がミカエルになるとき
決定事項は次のとおりー――

希沙良咲季、15歳。

IMH所属のモデル。

モデルとして活動しても、あくまで本業は中学生。

来年はうまくいけば念願の東宮高校1年生。

モデルを継続するにあたっての家族との取り決めは、文武両道のごとく、決して成績を落とすなかれ。

もちろん現時点における最大のミッションは高校受験を成功させ、必ず東宮高校に入学すること。

さらに、モデルをやっているという事実は、とりあえず高校卒業までは隠密にすること。

断じて他言するなかれ。

学業と極秘で両立させるべし。

「シェリルのモデルだ」なんて悟られることなきように、行動と格好には気をつけること。
(ここでトオ兄が「秘密にするならギャフンと言わせられない。残念だな」と、私を見た。

だから『ギャフン』て何?)

そのためにモデル名は芸名を使用(適当な家族審議の結果、名前はシャイラに決定。特に意味はない)。

台湾在住のタイワニーズ新人モデルということにする(この設定にも大した意味はない。

どうやっても東洋人でなければごまかしがきかないので、なんとなく穏やかそうな台湾になっただけのことである)。

IMHとの了解を得て、日本のブランド・雑誌の仕事は行わない。

営業はIMHのブッカーが、マネージャーはトオ兄とママ。

「いつもそばでフォローする」と言った手前仕方ないと思っているのか、トオ兄は意外と素直にその役割を引き受けた。

こうしてIMH事務所の全面協力を得ながら謎のモデル『シャイラ』と咲季の二面生活が始まった。
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