兄貴がミカエルになるとき

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3月。

頑張ったかいあって親友の美奈ちゃん、久美ちゃん、そしてちょっとした理由(実は“ちょっと”ではなく“とんでもない”理由だけど、これは後でのお楽しみ)から、やはり東宮学園を目指していた親戚の幸っちゃんと共に東宮学園に合格が決まった。

受験という学生にとって最大のミッションをコンプリートして、憑き物のように重く肩にのしかかっていたプレッシャーから開放された。

正真正銘の春の到来。

これで入学式まで思い切り遊べる! と浮かれまくっていた。

なのに、その様子をまるで透視していたかのように、7月のコレクションに向け、すぐにレッスンを始めるようにとの通達がIMH事務所から入ってきた。

特にウォーキングは責め苦に近い。

トレーナーとしてアメリカから送り込まれたティムさんは、厳しい上に口が悪い。

キューバ系アメリカ人なのに日本語がやたら上手いのは、その昔ニューヨークで出会った日本人に恋をして、付き合いたい一心で必死に言葉を学んだ成果だという。

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