兄貴がミカエルになるとき
私と久美ちゃんの家は、隣同士の駅にある。

同じ私鉄に乗って約20分の距離はしゃべっているとあっという間だ。

私より一つ手前の駅で降りる久美ちゃんが「じゃあ、また明日」と
軽く手をあげて、跳ねる様にホームに飛び降りた。

その瞬間、紺のプリーツスカートがひらりと翻った。

1月だというのに、スカートと白いソックスの間にのぞくスポーツ女子の
ふくらはぎはきれいな小麦色に焼けていて、そこだけ冬を飛び越していったみたいだ。

通勤ラッシュになる前の時間帯だというのに車内はけっこう混み合っていた。

開いたドアから冷たい風が入り込んできて、効きすぎの暖房と、
人いきれでむっと澱んだ車内の空気をかき回していった。

隣に立っていたサラリーマン風の男性のカバンに押されて脇腹に力を入れている間に次の駅に着き、電車を降りた。

駅から家までの距離はわずか7分。

なのに家に着くまでのあいだに、ジュースの販売機が10個もあるのは
いかがなものか、といつも考える。

エコ、エコと、世間は一生懸命な振りをしているけど、

街には24時間煌々と輝く電子看板とか、

店内には目が潰れそうなくらい眩しい蛍光灯とか、やたら電気で溢れている。


うちでは大震災以降、ママが使ったそばから電気器具のコンセントを引き抜いて
家族に節電を呼びかけているけれど、無駄に輝き続ける電燈を見るたび、
なんだか非効率的な努力をしている気分に襲われる。


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