兄貴がミカエルになるとき
「大丈夫だよ、パパ。だって幸っちゃんが男子校にいる方が不自然だもん」。

子供のころから彼を幸ちゃんと呼び、一緒におままごとをして育った私もママの意見に加担する。

「うーん」

腕組みをしたまま、パパが思考を続ける。

そこに、トオ兄も助っ人に入る。

「いいんじゃない? だって脳もココロも幸男は女の子なんだろ? 自分が意識する性を3年間も偽って学園生活を送ったら、ストレスで心を病みそうだ」

家族全員の熱意に脅され、いや、ほだされて、結局パパも絶対にバレないようにと念を押し、東宮学園女子部への入学を許した。

と、これが幸っちゃんが高宮学園に入ったいきさつだ。

まあ、誰が見ても幸っちゃんが男子だと気付く人はいないだろう。

逆に男だと言われたら相当驚く。

でも、本人は胸がないことに不安を抱き、今はブラジャーでごまかしているけど、そのうち豊胸手術を受けようかと悩んでいる。
< 93 / 307 >

この作品をシェア

pagetop