兄貴がミカエルになるとき
「それと、なんでメガネかけてるの? 急に視力落ちた? 」

「ううん、1.0ある」

「まさかダテ!?」

「うん、最近けっこう仕事が増えてきたから、まさかバレないとは思うけどちょっと変装みたいな感じ?」

幸っちゃんがまたじっーっと私の顔を見る。

「咲季ちゃん、メガネなくてもばれないと思うよ。それにその茶色のフレーム、恐ろしく地味なやつを選んだね」

「え、そう?」

メガネを外して目の前に掲げ、しげしげと眺めてみる。

確かに茶色の何の変哲もないオーソドックスなメガネだけど、私はこのフツーさが可愛いと思っている。

改めて眼鏡を眺める私の様子をみて、幸っちゃんが「はぁ」と、息をつく。

「スーパーなモデルちゃんなのに、オーラをそれだけ消滅できるって、ある意味すごいよね。さっきリカコが『まあ、季咲良さんたらメガネかけてますますダサくなったわね』ってブー・フー・ウーと噂してたよ。

少し困ったような呆れ顔を作って私を見る幸ちゃんは、それでもとてもきれいだ。
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