聖魔の想い人

<天ノ宮>で

古代文字と絵に包まれた、この世の昔を解き明かし、定かなものとすること。

それが、タガヤたち<史読み博士>たちの役目だった。日夜、数少ない資料に埋もれ古代文字を解読し、絵の意味を考え、昔の人々の生活の跡を回る。

カダの<史読み博士>たちがもっとも力を注いでいるのが、隣国ルアンとカダ王国との関係だった。

他の国には有り得ない程言葉が似ているのは何故か。最近になって、遥か昔は同じ国だったのではないか、という話が出た。

しかし、今タガヤが調べているのはそのことではなく<陰ノ室ノ皇子>に宿ったという<聖魔>についてだった。

魔物でありながら、<我界>の人間たちを魔物たちら守ってくれるという、呪術師たちの間では、神よりも神聖で尊いものとされている。<神界>に住まう生き物だ。

帝の秘書庫は、帝が住まう<天ノ宮>の地下にあり薄暗いため、タガヤは太い蝋燭を持ち込んだ。幸い、この時期はまだ綿入れを着ていれば地下でもそんなに寒くはない。

片っ端から棚の書物を読みあさり、必要そうなことは紙に書き留めている。
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