恋のはじまりは曖昧で

「田中主任、今日はいろいろとご迷惑をお掛けして本当にすみませんでした。まさか、虎太郎があんなことを言い出すとは思わなかったので」

「気にしないでいいよ。俺も楽しかったし。それに美味しいご飯も食べれたから逆にラッキーだったよ」

笑顔でそんなことを言われ、赤面してしまう。
お世辞だとは思うけど、確実にテンションは上がる。

「あの、お口に合いましたか?カレー、かなり甘口だったと思うんですけど」

「あぁ、旨かったよ。実は、大学で家を出るまで甘口のカレーを食べて育ったんだ。お袋が甘口しか食べれない人でね。辛口も食べるけど、どちらかといえばカレーは甘口派だから高瀬さんのカレーは本当に美味しかったよ」

頬をポリポリと掻きながら照れくさそうに言う。
その姿が失礼かも知れないけど可愛く思え、田中主任の意外な一面を見れて嬉しくなる。

「そうなんですね。よかった」

美味しかったと言われ、ニヤけずにはいられない。

私たちを散々振り回した虎太郎は、さっきお姉ちゃんが迎えに来て帰っていった。

私がご飯を作っている間、虎太郎は田中主任に肩車をしてもらったりお絵かきをしたりして遊んでもらっていた。
それもあってか、更に虎太郎は田中主任に懐いてしまった。
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